透析療法を続けていると、さまざまな原因で合併症が現れることがあります。当院では、透析患者さんの予後改善のための合併症対策として様々な取り組みを行っています
血液透析(HD)とは、自分の血液を体外へ送り出し、人工腎臓(透析装置)で血液中にたまった老廃物を取り除き、水や電解質のバランスを整え、きれいになった血液を体に再び戻す方法です。
HDF(血液透析濾過)は、通常透析に比べてより生体腎に近い透析方法です。
特にオンラインHDFは、大量の透析液を直接血液と混和させて攪拌し、ダイアライザーから抜くことで、通常透析では除去しにくい大きな尿毒素や、タンパク質に結合した尿毒素も効率的に除去できます。
透析患者さんの体に現れやすい症状として代表的なものに、不眠・イライラ・かゆみ・むずむず足症候群等があります。
この原因となる物質が何であるかは、残念ながら十分に解明できていないのが現状ですが、より生体腎の働きにより近い透析を行うことで、さまざまな通常透析では得られなかった改善効果が期待されています。
その他にも、透析アミロイド症による関節痛、透析中に血圧が下がったり胸が苦しくなったりして十分な透析ができない透析困難症、造血剤を投与してもなかなか貧血が改善しないエリスロポエチン不応性貧血等の改善効果も期待されています。
しかしオンラインHDFも良いことばかりではありません。通常透析では除去しにくい大きな尿毒素と一緒に、栄養指標となり浸透圧の保持に欠かせないアルブミンというタンパク質まで抜けてしまいます。
当院では、定期的に血液検査と使用後の透析液検査を実施し、尿毒素の抜けと同時にアルブミンが抜けすぎていないかの検査をおこない、安心して透析を受けていただけるように患者さん個々の状態によって、透析条件をこまめに調整しております。
現在、わが国では1回あたりの透析時間は4時間が基準となっていますが、さまざまな調査から1回あたりの透析時間はより長いほうが、以下に示すような効果があることが分かっています。
そのため、当院では、長時間透析をご希望される透析患者さんには、5時間以上の透析時間の御提供を行うようにしております。
透析治療では透析液の「水」がとても重要です。透析液は原水(当院では地下水)を浄化装置により精製し、透析液の原液と混合して作成しています。
この過程においてエンドトキシンという細菌に含まれている毒素が混入されてしまうと、透析膜を通過して血液中に進入し炎症反応を誘発します。この反応が長期にわたって繰り返されることにより、様々な合併症をひきおこすといわれています。
当院では、早くから透析液清浄化に取り組んでおり、原水から透析液が患者さんに供給されるまでの配管や装置を厳重に管理し、透析液のエンドトキシンと細菌を極限まで取り除いています。
更に透析液が常にクリーンである事を確認するため、エンドトキシン測定装置と細菌検出システムを設置し、エンドトキシンと細菌の数を測定し管理をおこなう事で、常に安定したクリーンな透析液を供給しています。
透析液の清浄化(=透析液をキレイに保つ事)の効果は細菌やエンドトキシンを取り除くだけではありません。
現在、透析液をキレイに保つ事で様々な症状が改善されるという報告が多くの学会で出されています。
以下に、現在までに学会などで報告されている内容を示しました。
血液透析は、患者さんの血液を透析の機器に一部循環させながら行う治療ですので、血液を体外に取り出すための経路となるバスキュラーアクセス(シャント)は血液透析において必要かつ不可欠なものです。
しかし、利用していくうちに「細くなる・詰まる・感染」といった何らかのトラブルを起こしてくることがあります。当施設では患者さんに安定した透析治療を提供できるようスタッフ教育や各種検査を積極的に行い、トラブルの予防・早期発見・治療に取り組んでおります。